コーストFIREとは?
「コーストFIRE(Coast FIRE)」とは、現時点で保有する投資資産だけで、追加投資をしなくても退職時までにFIRE目標額へ到達できる見込みが立った状態を指します。この状態になれば、将来のために追加で投資や貯蓄をする必要はもうありません。日々の生活費さえ稼げばよいため、ストレスの少ない仕事への転職、サバティカルの取得、起業など、自分の人生のペースを緩めることが可能になります。
このコースト状態に達しているかどうかを決めるのが「コースト目標額(コーストナンバー)」です。これは、特定の年齢において、将来追加の積み立てを行わずとも退職時までに目標額を達成するために必要とされる現在の資産額です。当計算機を使えば、現在の年齢と資産額から即座にコースト目標額を算出し、現在のあなたの立ち位置(コースト達成、順調、改善が必要)を診断します。
コーストFIREの計算ロジック
コーストFIREの計算は以下の3つのステップで行われます。
- FIRE目標額の算出: 「年間支出 ÷ 安全な取り崩し率(SWR)」。例えば、年間支出が360万円(月30万円)でSWRが4%の場合、目標額は9,000万円になります。もしリタイア後の税率を設定した場合は、その税率分だけ必要額を上乗せして計算します。また、公的年金などの受給を予定している場合、受給開始前と開始後の2段階で目標額を分割して計算します。
- コースト目標額の算出: 「FIRE目標額 ÷ (1 + 実質リターン)退職までの年数」。これは複利計算を逆算したものです。
- 進捗状況の判定: 「現在の資産額 ÷ コースト目標額」。100%を超えていればコースト達成です。100%に満たない場合は、目標に追いつくための「追加の積立額」または「目標達成時期(コースト年齢)」を計算します。
多くの簡易計算機で見落とされがちなのが、想定リターンの計算方法です。正しい実質リターンは「(1 + 名目リターン) ÷ (1 + インフレ率) - 1」で求める必要があります(単純な引き算ではありません)。例えば、名目リターン5%、インフレ率1%の場合、実質リターンは約3.96%となります。単純な引き算(4%)と比べるとわずかな差に見えますが、30年超の複利計算ではポートフォリオ全体で数十万〜100万円単位の誤差となり、想定より早く目標を達成したと誤認してしまう原因になります。本計算機ではすべてのシミュレーションを物価調整済みの「現在の価値(インフレ調整済)」で計算しています。
計算の具体例(32歳・真由さんの場合)
現在32歳の真由さんは、すでに1,500万円の投資資産を持っています。毎月の支出は30万円で、65歳での退職を計画しています。想定リターン(名目)を5%、インフレ率を1%(実質リターン約3.96%)と仮定します。
- FIRE目標額: 毎月の支出30万円(年間360万円)÷ SWR 4% = 65歳時点で9,000万円。
- 32歳時点のコースト目標額: 9,000万円 ÷ 1.039633 ≒ 約2,498万円。
- 真由さんの現在の達成率は約60%(1,500万円 ÷ 2,498万円)です。
- もし彼女が毎月70,000円の積立投資を継続した場合、資産と複利の効果によって、年齢とともに変動するコースト目標額を、48歳時点で上回ります。この年齢以降、彼女は将来のための積立投資をストップしても(任意)、65歳時点で9,000万円の資産を構築できます。
注意点として、コースト判定が出たからといって「48歳で仕事を完全に辞められる」という意味ではありません。あくまで「老後資金の準備が完了した」状態を指します。
判定の読み方
- ✓ コースト達成(コーラル表示): 投資資産額がコースト目標額を超えています。老後資金は複利だけで準備できるため、追加積立は不要です。
- 順調(エメラルド表示): コースト未達ですが、現在の積立ペースなら目標年齢までに到達します。判定の補足文に到達予測年齢が表示され、チャートには積立を続けた場合と停止した場合の推移がプロットされます。
- 改善が必要(アンバー表示): 現在のペースでは目標に届きません。対策として「追加で必要な月々の積立額」または「現在のペースで達成可能な退職年齢」のうち、より負担が少ない方を提示します。また、市場が明日30%急落した場合のシナリオをシミュレーションするための「クラッシュテスト」機能も備わっています。
よくある質問
コーストFIREと通常のFIREの最大の違いは何ですか?
一般的なFIRE(経済的自立・早期リタイア)は、すでに十分な資産があり、明日から一切働かなくても資産の取り崩しだけで生活費を全額賄える状態です。一方、コーストFIREは「老後資金の準備が終わった状態」を指します。老後の生活資金はすでに投資した資産の複利運用だけで将来まかなえるため、現役時代の生活費だけを稼げばよくなります。結果として、フルタイム勤務からパートタイムへ移行したり、好きな仕事を選んだりする自由が得られます。
NISAやiDeCoでの資産運用はどのように考慮すべきですか?
日本の税制において、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)で運用している資産と毎月の積立額は、それぞれこの計算機の「現在の投資額」と「毎月の積立額」に含めて入力します。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、65歳リタイアの計画であれば非常に相性が良いです。また、税率設定においては、資産に占めるNISA口座の割合が高い場合は、詳細設定の「リタイア後の税率」を低めに調整することで、より正確なFIRE目標額を算出できます。
明日市場が急落したらコーストFIREの計画はどうなりますか?
計算機の上部にある「クラッシュテスト」のトグルをオンにしてみてください。現在のポートフォリオが30%下落したシナリオで再判定を行います。市場の暴落は一時的に進捗を遅らせますが、数十年という長期の運用期間があれば回復する可能性が高いです。もし暴落後の判定(アンバー表示)に不安がある場合は、詳細設定から想定リターンを低めに設定する、あるいは目標リタイア年齢を数年遅らせるなど、保守的なシナリオを組み立てておくのが賢明です。